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今を生きる私たちに関わる被爆者を語る『被爆17000の日々』 書評 

2008.11.12 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

城侑 被爆17000の日々
詩集 被爆17000の日々
(1994/06/10)
城 侑

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☆☆☆☆☆
(今生きているということはなんだろうかと考えさせられます)


今も生活していらっしゃる被爆者を描いた詩集



被爆17000の日々』は被爆者の体験談に基づいた詩集です。

chim↑pomの日記を読んでくださった白糸雅樹さんに勧められて読みました。ありがとうございます。

この詩集で描かれている被爆者の体験談は、被爆当時のものではありません。
『17000の日々』という題名から確認することができるとおり、
原爆投下から45年以上経った現在を生きる被爆者がえがかれています。

この詩集が出版された1994年は今から見たら14年前。
被爆当時20歳だった人が70歳になる頃です。

被爆者の声など、被爆当時のことをうかがい知れる資料は数多いのに対して
被爆した後現在までどのように生活をしているかを東京ではなかなか学べません。
でも、彼らがまだ生活をしているかということは私たちに直接かかる問題でもあります。
被爆者への手当が税金で支払われているためです。

定年を越えて癌を発症した人
遺伝によって中学生になる子供の部活を止めさせなければいけなくなった人
77歳になって尚原子力潜水艦の寄港反対運動を行う人

全部で15編の詩が描かれ、別々に生きる人が生きていたということが感じられます。
そしてその一つ一つの生の中で生きることへの疑問が出てくるのです。


発症によって自分がどこから来たかを知ること



『いぼ(疣)』という詩で描かれるSさんは昭和21年生まれ。
原爆投下のときは胎児でした。
1954年の10月にいぼを発症し切除。そのあと
昭和55年
昭和57年6月
昭和58年1月・6月
昭和59年9月
と皮膚組織、鎖骨や胸筋、肩甲骨といぼと一緒に体の奥深くまで刻まれていきます。

さらに昭和61年8月に初めて知能テストの必要を指摘され
結果が知能指数60以下と出ます。
このときにSさんが原爆症であることが明らかになります。

同時に 頭蓋の周囲を計ると
原爆による小頭症の典型的な事例であることも判明した
そのうえ 2ヶ月病院へこないうちに
右腕の第二関節から上に向って
肉腫が点々とつながっており
肩の右側の肉腫はまるで赤ん坊の頭ほどに成長していた
同じ肩のうちと外でも
肉腫が ボンボンとお椀のように盛り上がっていた


Sさんはお母さんのお腹の中で被爆していました。
父親は被爆後すぐになくなり、
母親はSさんを生んだ後で行方不明となっていたため分からなかったのです。

結局Sさんは昭和63年に腹部にできた腫瘍で亡くなります。

『いぼ(疣)』は自分の由来をその死病によって知ってしまうというとても悲しい詩です。
聞き取りをした事柄を筆者の感慨なしに書かれることで、被爆経験をさらに考えさせられます。



被爆者と「認められる」こと



『被爆17000の日々』の特色のひとつは原子爆弾の被害を受けたことを証明するだけではなく、医療保護を受けるための被爆者健康手帳や被爆者認定証の取得です。

原爆症の認定を受けた患者は月額137,430円の補助を受けることができます。

そして、この保護故か、被爆者認定を受けるには煩瑣な手続きがかかります。
現在でも訴訟が絶えません。

『放射線医学総合研究所にて』はこの被爆者認定について細部に至るまで描かれています。
昭和57年に癌を発症したOさんの被爆者認定を得るための条件は
「ヒッチコック」の映画さながらです。
広島での同じ被爆の条件を持つ故人の骨を
一時 検査のためかして欲しいと博士がいうのだ
つまり 死んだ戦友の墓を掘って
骨をもってこいというのだ

そして、その骨を提供してもらうための遺族からの要請もうなづけるものながら切羽詰っています。
担当の医師 もしくは病院名で
その目的と どの程度の骨がいるのか
具体的に文書で明記して欲しい と


骨を遺族から提供していただいた上で、
さらに、Oさんと彼と同じ部隊にいた元隊員10人はCTスキャンで検査を受けます。

厚生大臣から被爆者認定証が降りたのが1987年。
11人が同じ検査を受けたにもかかわらず、
被爆者認定証をもらえたのはOさんだけでした。
そして1990年にはOさんはなくなっています。

『失われたハワイ旅行』で描かれる
Yさんが亡くなったのは昭和60年12月2日。
認定証の発行は昭和60年の12月1日でした。




2008年11月10日に長崎地裁で海外に住む被爆者が日本を訪問しなくても被爆者認定を受けることができるという判決が下りました。

また、京都原爆訴訟ネットでは、原爆症を認定するための訴訟の傍聴日誌が読めます。

『被爆17000の日々』に書かれている言葉は今も生きている私たちと関わる言葉です。
例えば、被爆者への手当は私たちの税金から支払われています。
一体誰のために私自身は働いているのかまで考えると、この詩集の深さを私は今も酌みとれずにいます。

この詩集は多喜二・百合子賞という、共産党系の作家小林多喜二・宮本百合子の名を冠した賞(2005年に休止)を受賞しています。。
14年前の詩集が今でも手に入ることは非常に嬉しく、できれば図書館などで手に取っていただきたいです。



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