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『三十、宴は終わった』は自分の言葉を作るための教科書です。 

2008.11.17 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

三十、宴は終わった―チェ・ヨンミ選詩集 (21世紀海外詩人選書 (3))三十、宴は終わった―チェ・ヨンミ選詩集 (21世紀海外詩人選書 (3))
(2005/10)
チェ ヨンミ韓 成礼

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☆☆☆☆★
(詩の中の自分の作り方を勉強するお手本にできます)

 今日の詩集は、韓国の詩人、崔泳美さんの詩集『三十、宴は終わった』です。表題のデビュー作と第二詩集の『夢のペダルを踏んで』を一冊にした翻訳です。

 『三十、宴は終わった』1994年に出版され、百万部を売り上げました。この詩集の、「○○が終わった」という言葉は流行語になりました。
韓国は人口が4900万人なので、この人口比換算すると日本で200万部売り上げたのと同じになります。200万部売る詩人というと日本では金子みすゞがいます。でも彼女は死んでからの200万部。それに対して崔泳美さんは40代の現役です。

尹健次さんのWEBから朝日新聞での書評が読めます

 崔泳美さんは1961年生まれ。光州事件後の学生運動にに身を投じて逮捕、そしてすぐに離婚という経歴。
 
現在韓国は離婚大国。中央日報の記事によると、2007年は12万4590件の離婚が成立しています。詩集の発売当初は華やかなアンダーグラウンド経歴に注目された彼女の詩は、15年経った今からみると韓国自体の未来を予兆させるかのようでした。

 出版から10年以上経った今では、出版当時の状況を探るのは難しくなりました。しかし、彼女の詩に表れる言葉の使い方の特徴や構成の巧みさは今読んでも興味深いものがあります。



詩集を通して感じられることは彼女の詩は二重の否定で作られているということです。
そして、その二重の否定の動きがとても見やすいために共感を得やすいように見えています。

例えば、タイトル作の『三十、宴は終わった』
学生運動時代を回顧する詩です。
冒頭部分。
もちろん、私は知っている
私が、運動よりも運動家を
酒よりも酒を飲む雰囲気をもっと好んだのを
そして寂しいときは、同志よ!で始まる闘争歌ではなく
低い声で、愛の歌を楽しんだのを
でもそれが一体、何だっていうの


「でもそれが一体、なんだっていうの」という否定の言葉の強さは。


(1)「運動よりも運動家」を好んでいたという自分の運動への批判。
これは左翼の批判として通俗的なものです。

そして
(2) (1)の言葉の否定。「でもそれが一体、なんだっていうの」。
この「それが一体、なんだっていうの」で否定されるものは分かります。
でも肯定したいものは誰もわかりません。
ただ残るものは作者の言葉ばかりです。

社会通俗的な批判をさらに否定することとその表現の多彩さで彼女の独立性が保たれているという詩の典型例であり、そしてその形に乗ったからこそ、詩、それ以上に視点の定め方が彼女一人のものになった感覚があります。
この二重の否定を経て得られる目は全体的に写実的になります。



『ラスト・セックスの思い出』は、性的なものが前面に出た詩のひとつとして全文を紹介したくなる詩です。全文出してみます。
1行目の石首魚は「いしもち」とよびます。
上海のお昼ご飯で料理方法が載っています。
こちらは上海の料理ですが、韓国で干してたべるそうです。

ラスト・セックスの思い出

朝食の石首魚一匹
つっつきながら、私は見た
ついに晒された肉身のヒミツ
暴かれた五臓六腑、散り散りに砕けた肉片
真実とはこんなものか
一度むけば骨と肉だけに収拾され
あの晩の陰部のように、怖いほど単純になる二人の物語
死んだ魚を裂きながら、私は知った
傷も生きているものだけがまとう服
これ以上傷つかないという約束
そんな恋を何回かした
燦爛と輝く鱗、幾重の雲が晴れるや
零れ落ちる朝の日差し
その透明さに驚き、素肌のまま身をすくめたあなたと私
どちらからともなく、びっしりと体中に
冷たい鱗を挿したっけ

生きて、跳ねた言葉
生きて、空腹だった体
すべてを失い、私は噛んだ
口の中いっぱいに淀む
ラスト・セックスの思い出


「朝食の石首魚一匹/つっつきながら、私は見た/ついに晒された肉身のヒミツ/暴かれた五臓六腑、散り散りに砕けた肉片/真実とはこんなものか」と人体とさかなを重ねる立ち上がりから想像されるのは肉体関係のどうしようもなさです。
でも、さらにカメラのズームというよりも指先の動きがその砕けた肉と自分との違いを知ります。

しかし、
死んだ魚を裂きながら、私は知った
傷も生きているものだけがまとう服

と生きている魚と今食べている魚の違いを見つけ出し

「びっしりと体中に/冷たい鱗を挿したっけ」という鱗の硬さから引き出されたセックスのやり方のイメージの丁寧で素早い描写。
起承転結のある詩を作って、その上で小説では作れないタイミングを得ています。

ここで取り上げた他にも、詩の中では発売当時に非難を巻き起こしたという『Personal Computer』の「ああ、コンピュータとセックスができさえすれば!」という言葉。
または、『詩』の「私は私の詩から/お金の匂いがしたらいい」に表される「お金」という直接的な言葉が描写によってかけがえの無いものに代わっていく風景は小説で表すことのできる時間とは全く違った軽さが感じられて詩という文学のよさを感じさせてくれます。




発売から10年以上経ち、「○○は終わった」という言葉を流行語に押し上げた強さはすでにこの詩集からは失われました。
ただ、二重の自己批判や物を写し取る写実的な姿勢でこの詩集から学べる抒情詩の作り方はまだ色あせてはいません。

二年ほど前に始めて読んだ詩集ですが、読むたびに面白いところを見つけられる詩集だと改めて思いました。
日本語の音韻を大事にしている韓成禮さんの翻訳の巧みさは翻訳を超えているということも最後に一点書き忘れてはいけないポイントです



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タグ : 書評 詩集 崔泳美 三十、宴は終わった

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