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広部英一詩集と静かな死 

2008.12.30 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

広部英一詩集 (現代詩文庫)広部英一詩集 (現代詩文庫)
(2000/08)
広部 英一

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☆☆☆★

現代詩文庫 160 広部英一詩集』に収められている『満月』はまるでムンクの絵の光を見るような涼しさがあります

満月

木の葉の舟を漕いで
水の上を行く一寸ばかりの童女
昼も夜も水の上を行く
木の葉の舟は小波にもまれて
やがて水底に沈みそうになる
木の葉の舟の上で童女は訴える
大きな掌が木の葉の舟を掬う
大きな掌が童女を掬う
大きな掌から水滴がこぼれて落ちる
とめどなくこぼれて落ちる
夜の水の上に水滴が落ちると
たちまち雲霧が晴れ上がる
みずうみの水面に満月が浮かぶ
大きな掌は童女を木の葉の舟に
乗せたまま西空へ連れてゆく
大きな掌の上のみずうみにも
遅い満月が浮かぶ
この詩は、
「大きな掌が木の葉の舟を掬う/大きな掌が童女を掬う」
「大きな掌から水滴がこぼれて落ちる/とめどなくこぼれて落ちる」
「夜の水の上に水滴が落ちると/たちまち雲霧が晴れ上がる/みずうみの水面に満月が浮かぶ」
というように別の言葉で同じ事を説明しようとする書き方が作っているような感じがします。
この歩調のゆっくりさが童女が掌に乗って西空へ行くという話の大きさを包み込むから、詩全体が大きく、落ち着いたように見えてくるように思えます。

この本の解説で三木卓さんが書いているとおり、「広部英一さんの死は、死者とともにある」のですが、この、西へ行く童女の詩に見られるとおり、死と同じように水がはずせない要素になっているように思えます。

例えば日野川という短い詩を取り上げてみると
日野川

深い袋に僕のチチハハの涙を入れて彼は訪ねて来た
代金は要りませんが領収書は要りますと彼は行った
僕は万年筆で涙の袋をうけとりましたと書いた
彼は満足そうにうなずくとそそくさと空へ帰っていった
さて、チチハハの涙をどこに置くかが僕の人生の難題になった
その日から僕は思い涙の袋をかついで生きていくことになった
時には大地に下ろした大袋に手を入れて涙を掬って嘗(な)めたり
橋上から袋の涙を少しずつ日野川に流したりするが


この詩の中で、突然渡される涙にも、それをどうしてチチハハと知ったのかもかかれていません。チチハハとカタカナだからそれが父母かも分かりません。
この涙を流せる日野川は福井に実在する河です。
なぜ流されるかも分からない。ただ流れる水とそれを受け取ることの重みがあるだけです。



広部英一さんは福井県の詩人で1931年生まれ、2004年になくなりました。北陸の詩人として重きをなした方だそうで荒川洋治さんの先輩筋に当たるそう。

広部さんの詩の多くには彼が25歳のときにおきたお母様の死が埋め込まれています。
例えば『窓』という詩の中では、寝棺の中に横たわるお母様を見たときの事が書かれています。

「おっかさまの顔が/セロファンのすぐ下にあった/おつかさまがあまりに近い/死者が近い」
「おつかさまが/とじきったまぶたの下からスラッシュせりあげるようにして頬に伝わせた一滴の涙の意味を/いまこの寝棺の窓がはつきりとおしえてくれる」
と、おののきの姿と、もう一度覗き込んだときの回想が隣り合わせに書き込まれていて、人の死の静かでかつ押し付けられるような重さを感じさせられます。

同じようにお母様の死を歌った詩は数多いのですが、家の軒先にある紙飛行機を母に見立てて書いた『紙飛行機』の
「たくさんの屋根から/自分の屋根を見つけるのは/飛んでいるものたちにとっては/容易なことらしかった」
など、
死の20年以上後になって書かれている自分を見てくれるお母様というイメージはコンプレックスという言葉を超えて鮮やかです。


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