社会分析脳を訓練する実践読書ブログ

勉強会の開催、参加・ビジネス書や人文書の読書を通じて、将来を見通す能力「社会分析脳」を鍛えていくブログです。

<<Flickrに掲載されたガザの虐殺を見て  | ホーム | 俊読に行きました>>

スポンサーサイト 

--.--.-- この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


ブログランキングに参加しております。よかったらクリックしてください。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ1

詩も対談も面白い『イェイツの詩を読む』 

2009.01.13 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

イェイツの詩を読むイェイツの詩を読む
(2000/12)
金子 光晴尾島 庄太郎

商品詳細を見る


☆☆☆☆☆
(他のイェイツ詩集をよむならまずはこれで)

イェイツの詩を読む』で翻訳されているイェイツ、またはイエーツの詩は日本語によるW.B.Yeatsの翻訳では一番読みやすいものに思えます。
この本を読んだ後では他の訳が読めなくなります。原書と電子辞書で十分です。

訳者は金子光晴と尾島庄太郎。

金子光晴は言わずと知れた日本最大の詩人の一人です。
彼とイェイツは書き手として共通点が多いのです。
象徴詩から反戦詩、孫が生まれたときの『若葉のうた』に代表される題材の幅広さ。
そして、『絶望の精神史』に代表される自国民への絶望を抱えていたこと。

イェイツの詩に多く表れるケルト神話やギリシャ神話。
金子光晴がほとんど遣うことのない神々のイメージを補うのが日夏耿之介の弟子にあたる尾島先生という気がします。


読みやすくなった詩



翻訳と尾島庄太郎と金子光晴による対談を一組構成にして、全部で50編の詩を取り扱ったこの本。先ほど書いたように訳がすばらしいのです。

例えば『さまよえるイーンガスの歌』。尾島・金子訳の全文を出します。
原文はこちらで読めます。

さまよえるイーンガスの歌

私はハシバミの林に行った。
頭の中が燃えていたので。
ハシバミの枝を切って皮をはぎ、
木の実を糸につけた。
そして白い蛾が飛びかい、
蛾のように星がまたたくころ、
木の実を流れに投げ入れて
小さい銀のマスをとった。

その魚を床において
火をおこしに行こうとすると
なにかが床にさらさらと音を立て、
だれかが私の名前を呼んだ。
マスはまばゆい娘になっていたのだ。
リンゴの花を髪の毛に、
私の名前を呼んで走り出し、
きらめくく空中に消えていった。

私は谷を歩き、丘をさすらい、
すっかり年をとったが、
娘はどこへ行ったかきっと探し出そう、
口づけしてその両手を取ろう。
まだらの高い草の中を歩いて、
いつまでもいつまでも時の尽きるまで
摘み取ろう、月の銀のりんごを、
太陽の金のりんごを。




他の訳を比べてみましょう。
角川文庫に出ている尾島庄太郎訳の一節目はこんな形です。
yoko's museから頂きました。ありがとうございます。
ほのお 頭(こうべ)にありけば
はしばみの林にゆきぬ。
かくて はしばみの小枝截(き)り
皮はぎて いちごの実を糸につなぎぬ。
かくて 白き蛾ひらめけば
蛾に似て星のまたたけば
細流(こながれ)にいちごを落としぬ。
かくて銀(しろがね)の小鱒(こます)を釣りぬ。


ブックオフで100円で売っている河出の世界文学全集に掲載されている西條八十訳はもっと古いです。
われはハシバミの林にゆきぬ。
火ぞわが頭のうちに燃えたれば
かくてハシバミの枝を切り、かつ皮むき
かくて果実を糸に懸けぬ。
かくて真白き蛾の舞ひいづるころ、
かくて蛾のごとき星かげの煌きいづるころ
われは果実を流れに落し
ちさき銀(しろがね)の鱒(ます)をとらへたり


原文はこのような形です。
I went out to the hazel wood,
Because a fire was in my head,
And cut and peeled a hazel wand,
And hooked a berry to a thread;
And when white moths were on the wing,
And moth-like stars were flickering out,
I dropped the berry in a stream
And caught a little silver trout.

各行の頭の音を原文と合わせた西條八十訳や、「I dropped the berry in a stream」の動詞「drop」を「投げ入れる」と訳した尾島・金子訳の動きなど細かな違いが見えます。
でも、日本語としての触りやすさは尾島・金子訳が一番今使われている日本語に近く見えます。

尾島・金子訳があれば、洋書の原文を見て詩を読める気になれます。
というか、今この本を頼りに知らないイェイツの詩を原文で学んでいます。



スリリングな対話



『イェイツの詩を読む』に掲載されている翻訳と同じくらい、いや、それ以上に魅力的なところは尾島庄太郎と金子光晴による対談です。
二人とも70を越えた同時代の研究者と実作者は一人の先人の詩をめぐってスリリングな意見を交わします

例えばイェイツが20代から50代にかけて恋をしたモード・ゴンの老いを書き、そしてモード・ゴンに捧げた『破れた夢』という詩の内容を巡って
金子:その美しさは漠然と記憶されるだけのものにすぎない、と予言する。そして、次の瞬間、死んだら墓の中で、かつての若いころの美しい姿にまた合えるだろう、という。極端な逆説表現で、よくまあこんなことまで恋人にずけずけ言えたもんだと思う
尾島:そうですね、美しくない小さい手、しかし、どうかそのままにしておいてくれ、というのも


ほかにも、晩年の日夏耿之介に破門されたと話す尾島庄太郎へ、金子光晴が「弟子の方が先に師匠を破門する」という言葉をかけたりと、70を越えて詩へ人生へ貪欲に取り組んでいて非常に楽しい対談です。


ブログランキングに参加しております。よかったらクリックしてください。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ1

テーマ : 本の紹介 - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 書評 詩集 翻訳 イエーツ イェイツ W.B.Yeats

コメント

はじめまして。 

はじめまして。
詩誌『紫陽』の編集人などをしております、藤井わらびです。
以前、フランシス・ポンジュの詩をトラックバックしてくださったようでありがとうございました。

私は昔イェイツを読んでいて、今も好きな詩人の一人ですので、イダヅカさんに親近感を感じました。
しかし、この尾島・金子コンビの訳を読んだことはないです。確かにこれは裏ごしされたかぼちゃのようになめらかで素晴らしいですね。訳がまずいとスムーズに読めず、イメージが広がってゆきませんから、訳詩はとても大切な創作だと常々思っています。

アイルランド詩は現在も文法が溶解したりせず、私たちにも読みやすいわけですが、その分シンボルによって深みを持たせてあります。特にイェイツは神秘主義者でもありますから、シンボルは多用しています。シンボルを読み解くことで、まったく違う世界が立ち現れることもありますし、より深く胸に響いてくると思います。
大修館書店『イメージ・シンボル事典』(アト・ド・フリース著)ではイェイツは多く引用されていますので、お薦めです。

さて、'The Song of Wandering Aengus' ですが、この詩はイェイツの理想郷がよく表された詩だと思います。'The Fish'という詩もそうですが、魚fishも小さな銀のマスa little silver troutも苦役なく歌と踊りに明け暮れるケルト的理想郷'Tir-na-nOg'の住人・美しい妖精で、あちらの世界に魅せられ追い求めたイェイツの心情が描かれています。同じようなモチーフの詩として'The Stolen Child''The Hosting of the Silhe''The Man who dreamed of Fearyland'あたりが挙げられるでしょうか。妖精は美しい夢を見せ取り憑いて人の頭を悩ませます。しかし、それは過酷な植民地下での「正しい」逃避であったかもしれません。イェイツの政治活動の動機は「理想郷」に憧れてやまない詩心であったのではないでしょうか。
話は当の詩のほうへ戻って、この舞台は夜、正しくは夕暮です。Aengusは愛と春の神ですし、「リンゴの花」とありますから、季節は春でしょう。「白い蛾」「銀のマス」はあちらの世界のはかないような美しさ、その対比として人間世界の赤く燃える「火」があります。最後の二行「月の銀のりんご」「太陽の金のりんご」は月と太陽、さらに銀と金という対で、どちらも融合すると完全な世界なるのですが、老詩人は「時が終わるまで」つまり最後の審判まで、その理想追求の姿勢を崩さないぞ、という強いおもいを込めたものでもあると私は解釈しております。

読みにくく長い文章になってしまいました。
私は現在アイルランド詩の第一人者・現在シェイマス・ヒーニーを読んでいます。
先日、オスカー・ワイルドもブログにアップしてみましたので、またご関心があればお越しください。
これからもいい作品に触れ詩的に生きていきたいものですね。

Re: はじめまして。 

はじめまして
藤井さん。
いつも紫陽の紙面や夾雑物さんや鈴川さんにお世話になっております。
いつかお会いしたいかたのトップにランクしております、
よろしくお願いします。

滑らかですばらしいというか、
いままでなんでイェイツ読みにくいと思っていたのだろうかと
改めて考えてしまいました。
尾島訳はうまくよめなかったのです。

シンボルを読み解くことで全く違う世界も新鮮でした。
やっぱり、一度きちんと高校時代に読み飛ばしたケルト神話を見直したほうがいいのだなと思いました。
「The Song of Wandering Aengus」の最後の2行は英語を見ても

The silver apples of the moon,
The golden apples of the sun.

と投げられていてよく分からなかったのです。
完全な世界を表すからこうおかないといけないのだなと納得しました。

>イェイツの政治活動の動機は「理想郷」に憧れてやまない詩心
理想郷に憧れる詩心が政治活動に巻き込まれていく過程が詩に表れているところが
詩の中にも現れ、また、尾島・金子の対談のなかにも出ていたことが印象的でした

訳詩は最近私も取り組んでいますが、本当に難しいですね。
難しいというか自分の言葉できちんと書かないと
詩が立ち上がらないことを改めて思い知ります。

実はイェイツは、3月にイェイツの詩を英語で朗読するために読んでおりました。
イェイツの詩をきちんと読めると思ったのは初めてで
尾島・金子訳はそのまま英語に行き着けるもので、本当に嬉しくなりました。

朗読についてはこちらのURLをご覧ください。東京ですが。
http://www.geocities.jp/sora_an_111/

私は、今、自分の詩が掲載された韓国の詩誌『詩向』と辞書を片手ににらめっこしています。
どなたか韓国語を分かる方がいたら一緒に訳したくてたまりません

 

お返事どうもありがとうございます!
イェイツの朗読イベントを、しかも英語でされるとのこと。凄いことですね! 「孤塔詩人」とはまたタイトルが洒落ています。

もうイェイツは読まれてないのではないかと思っておりましたので、こういうイベントを知ることができて嬉しいです。
近場であれば行きたいのですが、わたしは病弱でちょっと難しいです。
でも、ブログで書いてみたいと思います。少しでも多くの人に魅力を知ってほしいですし、「詩を楽しむ」ことが誰にも身近になればいいですから。


アイルランドの訳詩で、なかなかいいものに巡り会えないような気がします。
イェイツの詩も原文のほうがわかりやすいですね。こんなにスムーズで、文法もきっちりしているのに、日本語には創り直しにくい、というのが現在あまり読まれていない一つの要因でしょうか。

それから、前回コメントをした後で考えていて「どうかな?」と思ったところがありました。
「Aengusは愛と春の神ですし、『リンゴの花』とありますから、季節は春でしょう」
と書いたのですが、物理的時間は実はわかりません。ハシバミの森が永遠に青春を謳歌できる理想郷'Tir-na-nOg'的世界で、春めいているだけかもしれないのです。
細かいことになりましたが…。

あと、金子・尾島対談、かなり面白そうなのでまた読んでみたいと思います。

こちらこそこれからもよろしくお願いいたします。

Re: タイトルなし 

お返事遅れました。
私もイェイツを読むというのはこのイベントがきっかけなので驚きました
mixiではブロンテのコミュを主催しているのですが(活動してませんが)

> でも、ブログで書いてみたいと思います。少しでも多くの人に魅力を知ってほしいですし、「詩を楽しむ」ことが誰にも身近になればいいですから。

病弱でも行動できる社会になったのは非常にうれしいことです。
すきということで少し世の中がすみやすくかもしれないというのはうれしいことです。

イベントの主催者が昨年アイルランドでヒーニーにあったそう。
サインももっているらしいです

アイルランドに限らず、詩ってやはり自分の言葉で書かないといけなくて
好きなだけだと難しいのかもしれないなと思いました。

結局最後は自分で書くのだなぁと。
また、いろいろ読んで学びたいです。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://literturehardcore.blog51.fc2.com/tb.php/163-a7daf680

 | HOME | 

出演予定イベント
3月17日 (水)19:00-24:00
『ユアパ!vol.34@渋谷SECO』


渋谷SECO
東京都渋谷区渋谷1-11-1 B1F
03-6418-8141
1000円+ドリンク
メールマガジン
ポエムコンシェルジュの選んだ一篇
(ID:0001086342) 読者登録解除フォーム
メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。
登録フォーム**
まぐまぐ 『まぐまぐ!』から発行しています。
カテゴリー
月別アーカイブ
RSSフィード
最新記事のRSS
最新コメントのRSS
最新トラックバックのRSS

Add to Google
はてなRSSに追加
My Yahoo!に追加
Livedoorへ追加
最近の記事
ブログ内検索
リンク
アクセスカウンター
最近のコメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

twitter
ブログパーツ



復刊ドットコム
絶版になっている本の復刊に
協力願います。

アイデアのおもちゃ箱
新しいアイデアを思いつくツールが全部で20種類以上!
発想力を高める方法や偉人の発想エピソードも詰まっています
書評
おすすめ詩集(インディーズ)
おすすめ詩集(インディーズ)

五十嵐倫子『色トリドリの夜』
ブログ関係
プロフィール

イダヅカマコト

Author:イダヅカマコト
ポエム コンシェルジェとして、詩集や文学、発想の紹介をしております。
恋愛詩、克己詩、悲しい詩、うれしい詩など、こんな詩が知りたいというごお問い合わせを歓迎しております。
ご献本やコラム・書評の執筆依頼、撮影などの依頼もうけております。
ご献本いただいた書籍にはご紹介を書くよう努力しております。

よかったら、お問い合わせフォームよりメッセージください

また、Twitterもやっております。
こちらからよろしくおねがいします。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。