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一人ひとりの人に夢をくれる『貧困のない世界を創る』 

2009.02.01 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

貧困のない世界を創る貧困のない世界を創る
(2008/10/24)
ムハマド・ユヌス

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☆☆☆☆☆(時代は変わる)

2006年のノーベル賞受賞者、ムハマド・ユヌスさんの『貧困のない世界を創る』を開き、巻頭のアルバムを見ると、胸がわくわくします。

写真に写っているのは大人の女性ばかり。
そして、彼女たちがみんな笑顔でかっこいいのです。

この本は、どうやって彼女たちの笑顔が作られたかを教えてくれます。
彼女達はムハマド・ユヌスさんの開発したマイクロクレジットによる小口融資を行う「グラミン銀行」、携帯電話サービスの「グラミンフォン」、ヨーグルトのダノンと組んだ食糧供給の「グラミン・ダノン」に関わることによって貧困から脱し、または脱しつつある女性達。

貧困のない世界を創る』は、ビジネスのルールにのっとりながら、いかに人々を貧困から脱却させ、更なる希望を持ってもらったか。そして、これからどのようにユヌスさんが努力しているバングラデシュの経済を発展させていくかが書かれています。


人間は一人ひとり違うことを見つける



自身が経済学の中で生活していた学者だけあって、ユヌスさんは経済学における人間の扱われ方を切って捨てています。曰く
「経済学が人間の存在を受け入れようとするのは、「労働者」について話すときである」

これに比べ、ユヌスさんは実際の経済に関わることによって、人間の一人ひとりが能力と役割を持っていることをお金の流れの中で再発見します。

グラミン銀行で、私たちはすぐに気づいたのだ。男性、女性、子どもを「労働者」の集まりだと思うのではなく、異なった能力とニーズを持っている人間としてみることこそが、この現実の世界においては重要だということを。お金を貸した人々の実際の振る舞いを観察して、私たちはすぐに、貧しい女性を信用して貸し付けると、男性に貸し付けるよりも家族に利益がもたらされることに気づいた。男性はお金を稼ぐとそれを自分のために費やす傾向があるが、女性はお金を稼ぐと家族全員、特に子どもに利益をもたらすのだ。したがって、女性に貸し付けることは、結局家族全員への経済的利益とともに、地域の共同体全体に社会的利益をもたらす、滝のような効果を引き起こす。グラミン銀行では、私たちは最初にそういった母親を発見した。次に発見したのは子供たちだ。感情的あるいは道徳的な強制ではなく、論理的に正しい経済的理由で彼らを発見したのだ。もし貧困が減ったり、排除されたりするべきであるなら、次の世代はきっとそうなるに違いない。私たちは、全ての貧困の兆候と不名誉を子供たちから剥ぎ取る準備をしなければならない。そして、徐々に人間としての尊厳の感覚と未来への希望をしみ込ませていくのだ。
 だから、子供に焦点を当てたどのようなプログラムも、「人道主義的」あるいは「情け深い」プログラムとみなすべきではない。




貧困の実情に合わせた貧困脱却のための「決意」



実際のお金の流れの中で見つけられた一人ひとりの人間を貧困から脱却させるために、グラミン銀行は「16か条の決意」を新しいメンバーに求めます。

16か条の決意(抜粋)
1 私たちは、グラミン銀行の四つの原則である、規律、団結、勇気、勤勉に従い、どんな人生を歩むことになってもそれを実現することを誓います
3 私たちは壊れかけた家にはすみません。私たちは家を直し、出来るだけ早く新しい家を建てられるように働きます。
8 私たちは何時でも子供たちや、周囲の環境を清潔にしておきます。
10 私たちは、飲む前に水を沸騰させるか、ミョウバンを使います。私たちは砒素を取り除くためにピッチャーのフィルターを使います。
11 私たちは息子が結婚するときには持参金を要求せず、娘が結婚するときには持参金を渡しません。私たちは持参金の呪いにセンターを巻き込まないようにします。私たちは幼い子供同士の結婚を勧めません
13 私たちはより高い収入を得るために、みんなで集まってより大きな投資を始めます。
15 どこかのセンターで規則違反があったときには、私たちはそこへ出かけていって、規則を回復するのを助けます。
16 私たちはあらゆる社会活動にそろって参加します。


そして、これらの決意の内容が一つ一つ、グラミン銀行の定義する貧困かどうかの定義に当てはまっているのです。

ユヌスさんとグラミン銀行のメンバーの考えた貧困から脱却したものとする定義からもいくつか出してみます。
1 銀行のメンバーとその家族がトタン葺きの家か、少なくとも25000タカ(370ドル相当)の価値が或る家に住んでいること。家族達が、床ではなく、簡易ベッドか寝台にねていること。
4 メンバーの最小の毎週のローン分割返済額が200タカ(およそ3ドル)であること。
7 家族には、若し困ったときに頼るための菜園か、果樹など、収入の追加ゲンがあること
10 全てのメンバーの家族が、自分たちの健康について意識しており、病気の場合には適切な治療のために即時に行動を起こすことができ、医療費を支払うことができること。


決意の3と定義の1、決意の10と、定義の4が同じだということに気づかれましたか?
貧困かどうかを見る指標として、1日の収入が1ドル以下などがありますが、実際に使うものとしては生活と密着していたほうがいいのかなと改めて感じます。



全ての人間は生存のための技能を持っている



ユヌスさんが何度も強調していることは、貧富の差や機会に関わらず、どんな人間でも企業家としての能力を持っていることをです。
そしてその能力のことを生存する能力という言葉で表しています。

私は、すべての人間には生まれつきの、しかし、一般に認識されていない「技能」を持ち合わせていると堅く信じている。それは生存のための技能である。貧しい人々が「生きている」というまさしくその事実は、彼らにはこの技能があるという明白な証拠なのである。彼らには、私たちに生きる方法を教えてもらう必要などない―彼らは既にそれを知っているからだ!―そこで、彼らに新しい技能を教えて時間を浪費するよりも、彼らがすでに持ち合わせている技能をできるかぎり発揮するのを助けることに、私は焦点を合わせたのだ。貧しい人々にクレジットの道を与えれば、彼らはすでに持っている技能をすぐに実践に移すことができる。布を織ったり、米を脱穀したり、牛を育てたり、リキシャのペダルを踏んだり、といったことだ。こうした努力によって得た現金は道具となり、自身の他の才能を解き放つ鍵となる。



例えば戦争が終わって焼け野原になった太平洋戦争後の日本が立ち上がったのも、第一次大戦後スーパーインフレに陥ったドイツが曲がりなりにも立ち残ったのも、私たちが思わない「生存する能力」があったからでした。
ドイツの作家シュテファン・ツヴァイクが自身体験したにもかかわらず驚いていたこの能力と、少しのお金が彼女達に新しい力を与えるのでした。

ユヌスさんの目指すソーシャルビジネスでは、彼女達を「救う」のではありません。
あくまで、「ビジネス」の中で動き、「ビジネスライク」にお金を融資することによって、彼女たちが「生きる」能力を高めています。

世界の貧しい人々の間で注意深く観察を続け、グラミン銀行やそのほかの団体での数十年間の体験で確かめてきた私に言わせれば、企業家としての能力は実際には普遍的なものである。ほとんどだれでも、自分の周りでビジネスチャンスを認識できる才能を持っている。そして、そういったチャンスを現実に帰るツールを彼らに与えれば、ほとんどの人はやってみたいと切望するのだ。


貧しい人々はまるで、わずかな高さにしか育たない盆栽のような人々なのである。彼らの種子には悪いところはなにもない。ただ社会が彼らが育つ基盤になる土壌を与えてこなかっただけなのだ。


この本では、グラミン・ダノンの立ち上げを通してソーシャル・ビジネスの作り方を語られていたり、世界有数の大洪水を被災することによって、グラミン銀行の体制を見直したことなど、人間の営為のすごさを教えてくれます。

そして、現在27の企業を動かすユヌスさんが銀行家になった経緯をまとめるとき、自分の人生よりも長く活動をしているこの銀行に私は敬意を隠せません

私は部外者であったからこそ、貧しい人々自身――彼らが抱える問題、彼らの技術、彼らのニーズ、彼らの能力――を間近に見ることから始めることができたのだ。そしてわたしは、貧しい人々の中に貸し付けシステムを作り上げた。ある日、私は目覚めて、驚いたことに私が銀行家になっていることに気付いたのだ。、非常に型破りな銀行家に。
 ほぼ同じような具合で、私とグラミン銀行の同僚たちは気がつけば「偶然なる企業家」となっていた。私たちは、一連の関連企業を始めようとも計画していなかった。貧しい人々が貧困に身をゆだねるようになった経済的、社会的な状況の理解に励み、また、貧しい人々がその運命から彼らを解放するのを助けるツールを開発しようと、銀行化の役割を果たして貧しい人々の側で働いていただけだ。その過程で、私たちは貧しい人々の役に立つかもしれない新しいベンチャーを始める機会を、偶然見つけることになったのだ。


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タグ : 書評 銀行 グラミン マイクロファイナンス ユヌス 貧困のない世界を創る

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