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5分後、10分後の未来を変える意思の持ち方を教えてくれる『夜と霧』 

2009.06.21 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

第2次世界大戦中の体験というにはあまりに苛烈な収容所体験を記した『夜と霧』は、すぐ次の瞬間にある未来ですら、その人の意志によって変わることをまざまざと教えてくれます。

夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録
(1985/01)
V.E.フランクル

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正直大学生の時はその中の収容所体験の苛烈さのせいで、うまく読むことができませんでした。
社会人になって自分とははるか遠く、またはきつい世界で働いている方を見るたびに『夜と霧』の持つ、人生を動かすために使われる自分の意志の強さを感じるようになりました。

著者のV.E.フランクルはフロイトとアドラーに学んだ心理学者です。ユダヤ人として強制収容所に連行されました。奥さんと娘を失っています。

収容所から解放された後、ロゴセラピーという精神治療の方法を確立していますが、その理論の実践場所として彼は収容所に閉じ込められた自分自身を使いました。
そして彼は生き延びました

夜と霧』は自己啓発の古典として、『七つの習慣』にも大きく取り上げられている本です。


奪うことのできない「人間の最後の自由」

与えられた事態にある態度をとる人間の最後の自由、をとることはできないということの証明力をもっているのである。「あれこれの態度を取ることができる」ということは存するのであり、収容所ないの毎日毎時がこの内的決断を行う数千の機会を与えたのであった。


たとえ食物のカロリー不足や睡眠不足やいろいろな心理的コンプレックスが、人間が典型的な収容所根性に堕してしまうのを理解させるとは言え――最後の観点においては人間の内部に起こったもの、内的決断の結果が示されるのである。原則的に言えば各人はかかる状態の上でもなお、収容所において何が彼から精神的意味で出てくるかということを何らかの形で決断しうるのである。すなわち典型的な「収容所囚人」になるか、あるいはここにおいてもなお人間としてとどまり、人間としての尊厳を守る一人の人間になるかという決断である。


人間にとって極限の状態というのがあるとしたら、それは肉体が死ぬ瞬間ではなく、絶望に心がとらわれた瞬間です。

夜と霧』では様々な死について語られています。

収容所に入った初日の選別でガス室に送られる人。
絶望で動く気になれず、収容所がいよいよ解放されるという日に連合軍から逃れるドイツ軍に焼き殺された人もいます。

そして中には、「『わたしをこんなひどい目に遭わしてくれた運命に対して私は感謝していますわ』」と言い切る瀕死の女性もいます。

この人たちの死の重さは外から見た人にはわかりません。でも、それぞれの人が死に向かう瞬間に取る態度は人によってちがいます。

ホロコーストではいくつもの感動的な死があります。
たとえば、妻子のいるポーランド人軍曹に代って餓死することを引き受けた聖コルベはその一例です。

通常、餓死刑に処せられるとその牢内において受刑者たちは飢えと渇きによって錯乱状態で死ぬのが普通であったが、コルベと9人は互いに励ましあいながら死んでいったといわれている。時折牢内の様子を見に来た看守は、牢内から聞こえる祈りと歌声によって餓死室は聖堂のように感じられた、と証言している。2週間後、コルベを含む4人はまだ息があったため、フェノールを注射して殺害された。(wikipedia)


1人の福音を諦めないリーダーによって、共に死んだ方の死の意義がどのように高められたかは私にはわかりません。
ただ、水も与えら得ない中2週間たってその命が希望を保ち続けていたという事実と、そして聖コルベに助けられた軍曹が1993年まで生きながらえたことを知るのみです。




未来への立ち方は自分が決める

一つの未来を、彼自身の未来を信ずることのできなかった人間は収容所で滅亡して行った。未来をうしなうと共に彼はそのよりどころを失い、内的に崩壊し身体的にも心理的にも転落したのであった。


夜と霧』では、1945年の5月30日に戦争が終ると信じていた人が、5月30日に戦争が終りそうもないと知るにつれて急激に体力を低下させ、そのまま5月30日に危篤になり、31日には本当に死んでしまったという脚本家の話が紹介されています。

予言に従えば戦争と苦悩が「彼にとって」終る日に――Fはひどい譫妄状態に陥り始め、そして終に意識を失った。…5月31日に彼は死んだ。彼は発疹チフスで死んだのである。
(中略)
……かくして結局彼の夢は正しかったのである。


昔女性と付き合っていて、ある月に別れるだろうなと考えながら付き合っていたことがありました。ある月を一番初めから最後まで半ば絶望的な体調で活動しながら、どうにか乗り切れると思った瞬間、別れたのでした。このパターンは何度も続きました。

まちがっても相手に嫌いと言ってはいけない、別れようと口走ってはいけないと思いながら口を離し、最後、大丈夫だと思った瞬間に相手は逃げていきました。
自分の中で生まれていた未来の芽は、たとえ自分が摘み取らなくても誰かが摘むのだと思い知った瞬間でした。

これに対して私の知り合いのソープで働いている方が語る性病についての職場体験は強い希望を私にくれます。
自分の仕事に対してきちんと誇りを持っている人は、いくら本番をやっても性病にかかりにくいし、かかってもすぐ治るし、自分の体のケアもきちんとしている。貯金もできる。
それに対して自分の仕事に誇りを持たない人は病気にかかりやすいし、病気にかかった後治るまでに時間がかかる。話していて、希望がないといいうことでした。
どんな場所でも気持ちの保ち方が自分の生活を作るのだと改めて知った話でした。

夜と霧』には人間を生き延びさせる力としての「好奇心」であったり、自殺しようとした仲間に心理的な治療によって希望を取り戻してもらった逸話など、とりあげるべき話に枚挙がありません。

しかしながら、この本を通してくみとれる大切なことは、人間の意志は5年や10年といった未来だけではなく、その瞬間瞬間に切り開かれる未来に結びついているのだということでした。




夜と霧』は多くの図版が掲載されています。その中には、囚人から取った金歯や髪を送付した伝票など、ユダヤ人虐殺がいかに工業的に行われていたかが手に取れます。
アウシュヴィッツやアンネ・フランクのなくなったベルゲン=ベルゼンなど、それぞれの収容所の中の施設や死者の人数、ガス室の様子までもが詳細に書かれた資料があり、ホロコーストについて初めて学ぶ方にもお薦めです。




最後に『夜と霧』と映画『愛をよむ人』

 映画『愛をよむ人』の原作となったベルンハルト・シュリンクの傑作小説『朗読者』でも、『夜と霧』で描かれた収容所の光景が引用されています。
作品には読んだことは直接書かれていませんが主人公のミヒャエルは『夜と霧』を読んでいたと設定されていると思われます。

『朗読者』の中盤で出る収容所の描写は、『夜と霧』で語られる収容所生活の第2期と同じなのです。

 『朗読者』は、ハンナとミヒャエルの恋愛が時代を超えて結びつくというお話を超えて、ホロコーストとドイツ人の責任について語られています。
映画を観る前にぜひ『夜と霧』を読んでいただきたいですし、好きな小説としてきちんと日記を書きたいと思います。

 私は長い間、小説としてハンナがなぜある秘密を否定し続けなければならず、同時に有罪判決を受けたミヒャエルが、ハンナに手紙を書く代わりに古典を朗読したテープを送り続けるだけだったのかが分かりませんでした。
 二人の行動は、それぞれの相手に届いている分、二人の心の絆は離れない代わり、すり切れていく感覚を受けるのです。小説の最後はあえて語れないのですが。

夜と霧』の極限状態で人がとった態度を学ぶことで、ハンナとミヒャエルの一つ一つの行為が、ドイツで一人ひとりの人が選んだホロコーストへの態度、ひいては私たち一人ひとりがその人生の節目でとる行為をさらに深く学べる気がします。

合わせてお読みください

朗読者 (新潮文庫)朗読者 (新潮文庫)
(2003/05)
ベルンハルト シュリンク

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