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映画『愛を読む人』の原作は自由について教えてくれる強いメッセージ 

2009.07.04 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

まずはご報告。
シゴタノ読書塾Vol.3で佐々木賞を受賞しました。
ありがとうございました。

読書塾で取り上げた本は『夜と霧』。
ホロコースト体験を下敷きにして書かれた心理学のエッセイで、どんな極限状態でも自分自身の行動を自分で選ぶことができるということを強く感じさせてくれる本でした。


この本に引き続いて、久しぶりに取り上げる本は『朗読者』。
映画『愛を読む人』の原作です。

朗読者 (新潮文庫)朗読者 (新潮文庫)
(2003/05)
ベルンハルト シュリンク

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高校生のミヒャエルと、倍ほど年上の恋人ハンナとの関係が主人公。
ある日ハンナはミヒャエルから逃げ出すようにいなくなります。

成長し、法学部の学生となったミヒャエルがハンナを見つけたのは場所は裁判所の被告席。
ハンナはホロコーストに関与していたのです。

有罪になったハンナに、ミヒャエルは古典文学を朗読したテープを送り続けます。それは彼が昔、ハンナとの逢瀬で行っていた行為でした。
長い懲役の間ミヒャエルはハンナにテープを送り続け、そして何十年もの時を経て再会するのです。

とても静かなこの小説は、恋愛小説の形を持ち、しかもミステリーの形を持ち、そしてホロコーストについて深く触れようとします。

夜と霧』での描写がそのまま使われている部分もあります。

それはまるで、一月また一月と生き延び、自体に慣れっこになった強制収容所の囚人が、新しく到着した人々の驚愕ぶりを無関心に眺めるようなものだった。誰かが殺されたり死んでいったりする様子を知覚する際の、彼の麻痺した態度も同じだった。生き延びた人々が書いた本にはすべて、この種感覚麻痺が報告されている。感覚が麻痺することで生命の機能は縮小し、その人の態度は無関心で思いやりのないものとなり、ガス室での殺人やしたい焼却も日常茶飯事となった。加害者達の数少ない発言の中でも、限定された幾つかの機能だけを果たし、無思慮で無関心な態度や鈍さにおいて、麻酔をかけられたか酔っ払った様子なのだ。被告人たちはまるで、いまだに、そして永遠にこの麻酔にとらわれており、そのままある程度硬直化してしまった人々に見えた。


ハンナが捕らえられた理由は、連合軍の爆撃で火に包まれた倉庫から収容所の囚人を助けなかったためでした。

加害者が誰なのかすらあいまいになるこの犯罪(なにせ爆弾は連合軍が落としたのですから)で、彼女はある秘密を守り続けます。
彼女を無罪にすることができる秘密にミヒャエルは気づくのですが、彼も迷って末に証言しないことに決めます。

このとき、ハンナを守るためにとったミヒャエルの行動が普通の人から見てまちがっている事はわかっています。この決断をひとりで下すとき、ミヒャエルは父親の元に向かいます。
このときの父親の言葉、
「わたしたちは幸福について話しているんじゃなくて、自由と尊厳の話をしているんだよ。押さないときでさえ、君はその違いを知っていたんだ。ママがいつも正しいからといって、それが君の慰めになったわけじゃないんだよ。」


はまさにそのまま『夜と霧』の

与えられた事態にある態度をとる人間の最後の自由、をとることはできないということの証明力をもっているのである。「あれこれの態度を取ることができる」ということは存するのであり、収容所内の毎日毎時がこの内的決断を行う数千の機会を与えたのであった。


ということをフィクションにおいて実現させようとする行為なのではないでしょうか。
わたし達の自由とは何なのか、本当に守りたいものはないかを改めて考えさせてくれる小説でした。




また、この小説はその静かな描写によって他のドイツ文学への扉を開いてくれます。
たとえば、この本の第2章の夢に出てくる家は、ヴァルター・ベンヤミンの『1910年代のドイツの幼年時代』を思わせます。

また、ところどころにリルケを思わせる描写もあり、一つ一つ見つけるごとに読書の喜びが増していきます。



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テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 夜と霧 朗読者 シュリンク

コメント

Re: 映画『愛を読む人』の原作は自由について教えてくれる強いメッセージ 

どこに強いメッセージがあるのか教えてください。
この映画がよくわかりません。教えてください。
裁判ではみんな冤罪だって知ってるのに、終盤では本を読んだ人は彼女が重ーい罪を犯したと思い込んでしまっている。
生き残った娘も、責任者の顔は覚えていなくて、本を読ませる変な人は覚えているのだから、その変な人が責任者でないことを知っているはずなのに・・・。
「彼女を許すようでお金は受け取れません」といいました。
そんなに怒りが強いのなら、なぜ裁判のときに他の被告人を許したのでしょう?
主人公も面会のときに「たっぷり反省したか?」というような意味の問いかけをしていますが、冤罪のひとには普通は「大変だったね、お疲れ様」ではないでしょうか?
なんだか変な物語です。

Re: Re: 映画『愛を読む人』の原作は自由について教えてくれる強いメッセージ 

こんにちは。
コメントありがとうございます。

実のところ映画を見ていないのです。
そしてこのブログも小説の『朗読者』についての文章なんです。

朗読者は好きですが、映画自体は見ていないということで、
答えられる範囲で答えさせていただきます。
本当にこの点では申し訳なく思っています

とおりすがりさんのお話を見ると、おそらく字幕の翻訳者の方がドイツ史について知らないで訳されたのだなと推察されます。

1940年代にドイツが行ったユダヤ人虐殺の後、虐殺に関わった人は罪人として起訴されました。

(ドイツではナチズムや、ユダヤ人虐殺が嘘だと言う人は、今でも犯罪として処罰されます)

1960年代以降のドイツでホロコーストは誰が悪かったのかという議論が生まれました。
ナチスのような一部の人の犯罪か、
それともナチスを支持したか黙ってみていたドイツ人全体の犯罪か、
という話です。

この議論には、戦争後に成人した世代と戦争時代の人との世代間での争いや、学生運動が絡んでいました。


『朗読者』はホロコーストについての考え方が変わる中で、
ナチスに反対して大学で出世できなかった親を持つ(つまり有罪でない)ミヒャエルが、ナチスの犯罪に深く関わった女性に恋してしまうという話です。

この部分については小説の『朗読者』の第三部の始めのほうが判りやすいと思います。
ぜひ一読ください。

『朗読者』であり『愛を読むひと』でも一番強い部分は、
かつて戦争犯罪を犯した人を愛してしまったという状況で、主人公が自分自身の問題としてホロコーストを考え、その上で行動をしたことにあるんだとおもいます。

そのことが、『夜と霧』の「あれこれの態度をとる」に結びついているのだと私は思っています。


---------------------
ところで、ハンナ自身も、他の被告人も実際に報告書を書いたかどうかによらず、ホロコーストに関わったという意味では有罪でした。
あとはどのような罪を誰がかぶるかというかというところでうまく罪を被せやすいハンナに罪が集中し、裁判の中の話もハンナが一番重い罪をかぶるようにつくられていきました。


恐らく、映画を見ないと

> 主人公も面会のときに「たっぷり反省したか?」というような意味の問いかけをしていますが、冤罪のひとには普通は「大変だったね、お疲れ様」ではないでしょうか?

ここの台詞はうまく答えられません。すいません。
小説では、多分、この部分が

「出所できると聞いてうれしいよ」
になっています。
「たっぷり反省したか?」とは書けない展開になっています。

ドイツ語が読めないので、英訳版を確認したいのですが、手元にないため、
本当にこの言葉だったかは分かりません。

ただ、唯一生き延びた女性のセリフについては答えられると思うので答えさせてください。

> 「彼女を許すようでお金は受け取れません」といいました。
> そんなに怒りが強いのなら、なぜ裁判のときに他の被告人を許したのでしょう?
他の被告人を許すような言動を女性がするとはちょっと想像しがたいです。
もしも許せていたら、「他はいいけどハンナはだめ」というようなセリフを助かった女性が話されていたらそれは映画を見ないとまずいと思っています。

お金については、

虐殺を行った人としてのハンナは許せないということと
(お金を受け取って、ユダヤ人のために使うこと)

人間としての彼女を理解する
(お金が入っていた缶だけを受け取る)

というのだと思います
女性は缶については受け取ったのでしょうか?

おそらくこれって映画の評価を考え直させるものだと思うのですが。

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