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心が運動している詩集 藤井わらび『むらさきの海』 

2009.07.17 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

むらさきの海 藤井わらびむらさきの海
(2007/10/31)
藤井わらび

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「心で書かれた詩」という言葉を話すとき、藤井わらびさんの『むらさきの海』を外
すことはできません。

外すことのできない理由は、連動していることです。
連動しているのは、彼女の考えていることと、彼女の見えているもの。そして彼女の言葉の三つです。
詩を書き続けるということは、常にこの三つが連動してあたらしい何かを作っているのだと思います。
でも、『むらさきの海』ではその運動がひとつの詩集の中で深まっていく流れが楽しめます。

私が好きな詩は二編目の『私を支える大地』。

私を支える大地

人の温かさを受け入れられなくなっているときは
もう自分ではないでしょう
ただ振り返りアラ探しばかりはじめた
それはもう過去の自分でしょう?
緑が噴き出るこの大地に
「幸せ」が求められないはずがないでしょう
夢を差し出してくれる生命たちに
「果て」などないでしょう?

自分が信じたこの道を歩いてゆけばいいのだよ
と踏みしめた一粒一粒が教えてくれる
小さな目線が私の足を支える
ひとりで歩いているなんて傲慢でしょう?
あなたがたがいつもいる
その限り私は歩いてゆけるでしょう



この詩の中では、「幸せ」や「『果て』がない」といったことにに対応した「緑が噴き出るこの大地」や「夢を差し出してくれる生命たち」といったイメージによる問いかけが、一行あけた次の場所で「自分が信じたこの道を歩いてゆけばいい」と前向きに繋がっていきます。
そして、その歩いていることが「一粒一粒」の土によって伝えれていること。
つまり、前向きに進もうとしている自分自身が前向きなイメージを作ってくれた大地にさらに支えられています。
一つ一つの行動が一つ一つ大地によってはげまされていくという、とても前向きになれる詩です。




『分かれない影』も前向きになる詩です。

分かれない影

地は海から生まれた
生命は海から生まれた

胎児は息をする
そして すでに知っている
神の恵みを受けた
神の子だということを

私はまだわからない
この世には"光"が照るのに
しかし 少しずつ少しずつ
愚かさがわかってくるようだ

胎児は息をする
たった数ミリの生き物なのに
私よりずっと判っている
自分の生まれてきた意味を
計れない命の重さを


「胎児は息をする/たった数ミリの生き物なのに/私よりずっと判っている」と書かれている行が一番印象的です。

意志を持っているかどうか分からない「数ミリの生き物」に書き手が問いかけているように聞こえます。
そして、その問いかけに対して書き手自身が「私より判っている」と答えているように感じます。
あの、人かどうかもわからないとても小さな「胎児」を「神の子」と言い表されていることも、その書き手自身の問いに対して

「胎児」という誰にでもできうる生命によって示されている「神の子」がとても印象的です。この詩は、むしろ「神の子」をイエス・キリストだといっている沢山の詩よりも宗教的な感覚を私は受けます。

 田川建三さんの『キリスト教思想への招待』や『イエスという男』で現れるイエス・キリストは、その時代の宗教のしきたりに対していくつもの問いを発しているからです。それはあたかもソクラテスのように根本的なところをついてくれます。



藤井わらびさんは関西在住の詩人で、ほとんど毎月と言っていいほど現代詩手帖に取り上げられている詩の雑誌『紫陽』の発行をされています。
そううつ病と生活をしながら詩を描かれている方です

彼女のブログ『藤井わらびの詩的生活』でも彼女の詩やアイルランドの詩の翻訳が読むことができます。

『むらさきの海』は必ずしも万人向けではありません。
「貧困、飢餓、戦争」というふうに社会問題について、きちんと形になっていない言葉が投げ出されているように見える詩もあります。
 その心がゴリゴリして僕には食べきれない詩もあります。

 それでも、ひとりの書き手が世界ときちんと向き合って戦ったものとして、『むらさきの海』はお薦めできる詩集です。


T.A.さんによる書評も彼女の詩について向き合っているいい書評だと思うので、ぜひご一読ください。



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テーマ : 読んだ本。 - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 藤井わらび むらさきの海

コメント

Re: 心が運動している詩集 藤井わらび『むらさきの海』 

素敵な批評をありがとうございました。
しっかり読んでくださって本当に恐縮です。

そうですね、Ⅰ章のほうが前向きなのは、体調のお陰でもあります。Ⅱ章の詩群は薬で死にかけて世界が悪夢にしか見えないような幻覚の中で書かれました。
それを刻んだのは前向きでしたが、読者には重すぎるかもしれませんね。

「分かれない影」は「むらさきの海」への応答として書かれました。
人の脳・体には地球上の様々な「記憶」が刻まれているそうです。私たちは日常では脳の一部分しか使用しませんが、詩作するために瞑想するときは特殊な力を使っているような感じがします。命の起源を探る深海に潜るようなイメージを私は持っています。

現代生活のなかで私たちは「命の力」を失っていくのではないか、と、だから、「胎児」のように小さな生まれたての命のほうが、「生きる」ことの多くを知っているのではないかと思います。

誰もが縁あってここに存在すると思いますので、自分の特異性を守り育てながら、みんなと友愛で繋がってゆけたらいいですね。

Re: Re: 心が運動している詩集 藤井わらび『むらさきの海』 

藤井さん>
実はいろんなところで何度も立ち読みして、気になってはごつごつして触りきれず、今回勇気を出しました。
ありがとうございました。

体調に関わらず詩を書かれているというのがすごいです。わたしはすぐに書かなくなりますので。

> 人の脳・体には地球上の様々な「記憶」が刻まれているそうです。私たちは日常では脳の一部分しか使用しませんが、詩作するために瞑想するときは特殊な力を使っているような感じがします。命の起源を探る深海に潜るようなイメージを私は持っています。

わたしも集中しているときは別のものが口をあけているような気がします。
潜り込めれば楽なのかなあと思いつつ、書こうとしています。

「命の力」というものが出てくるのがすごいなと思います。
今回藤井さんと知り合えて本当にうれしかったし、そういう縁を大切にしてまた書きたいなと思いました。
今週は高知に行くまでに一つ詩を書くと自分を見ています。

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