社会分析脳を訓練する実践読書ブログ

勉強会の開催、参加・ビジネス書や人文書の読書を通じて、将来を見通す能力「社会分析脳」を鍛えていくブログです。

<<視覚マーケティング実践講座に行って、デザインって、自分をつくることだって始めて知りました  | ホーム | 美崎さんアマゾン三位おめでとうござい>>

スポンサーサイト 

--.--.-- この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


ブログランキングに参加しております。よかったらクリックしてください。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ1

宗左近さんの詩の捨て身で描かれている静かさ 

2009.09.15 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

思潮社の現代文庫は一冊で一人の人の代表作を多く読めるセレクション集です。
一人の人の代表作を多く読むことはとても不思議な気持ちがします。
ある人の長い年月、時には20年以上を一度に読んでいることのです。しかも、一冊一冊の集はたいてい別のコンセプトで書かれているはずなのに、丁寧に追っていくと見えない岩にぶつかります。

宗左近詩集』より学ばされたことは、その静けさでした。




ほととぎす 宗左近

   ほととぎす鳴きつるほうをながむれば
     ただ有明の月ぞのこれる (後徳大寺左大臣)

空がすみわたっている
(とけている鏡のように)

夏は空だけが冷えている
(水のなかの鏡のように)

雲が暑さのふちにこぼれている
(空に浮いた鏡のように)

風が吹きあがっては青んでいる
(夢の中の鏡のように)

夜が深まる光の中に息をとめてくる
(砕ける前の鏡のように)

いってしまうものはよみがえってこない
(とけている鏡のように)

見えないほととぎすが鳴く
水の中の鏡の中で


このは小倉百人一首をもとにして書かれた『鑑賞百人一首』という1973年に出版された集の一篇です。

「いる」「ように」「いる」「ように」「くる」「ように」という何度も繰り返されるリフレインの中で、ひときわ際立つのがその音が崩れる6連目の「いってしまうものはよみがえってこない」です。
「こない」「ように」という二行連続でイの音で止まる言葉は、静かなしらべのから浮かび上がって動けなくなっているようです。

このの静けさがどこから来たのかを考えると、この集を読んでくださった方はきっと、『宗左近詩集 』の冒頭に収められた、『炎える母』の篇に思いを寄せてしまいます。

東京の空襲で焼死したお母様を描かれた『炎える母
』は戦後20年を過ぎてようやく世に問われた戦争です。
太平洋戦争中、徴兵を拒否するために体重を20kg落とし、精神病だとまで言い張った宗左近さんですが、空襲という形で戦争から逃げられなくなります。
『炎える母』の詩はどれも胸打たれる詩なのですが、ここではその中でも『走っている』を引用したいと思います。




走っている

走っている
火の海の中に炎の一本道が
突堤のようにのめりでて
走っている
その一本道の炎のうえを
赤い釘みたいなわたしが
走っている
走っている
一本道の炎が
走っているから走っている
走りやまないからはしっている
わたしが
走っているから走りやまないでいる
走っている
とまっていられないから走っている
わたしの走るしたを
わたしの走るさきを
焼きながら
燃やしながら
走っている走っている
走っているものを追いぬいて
走っているものを突きぬけて
走っているものが走っている
走っている
走って

いないものは
いない
走っていないものは
走っていない
走っているものは
走って

走って
走って
いるものが
走っていない
いない
走って
いたものが
走っていない
いない
いるものが

いない

母よ

いない
母がいない
走っている走っていた走っている
母がいない

母よ

走っている
わたし

母よ


走っている
わたしは
走っている
走っていないで
いることが
できない

ずるずるずるずる
ずるずるずる
ずりぬけてずりおちてすべりさって
いったものは
あれは
あれは
すりぬけることからすりぬけて
ずりおちることからずりおちて
すべりさることからすべりさって
いったあの熱いものは
ぬるぬるとぬるぬるとひたすらぬるぬるとしていた
あれは
わたしの掌のなかの母の掌なのか
母の掌のなかのわたしの掌なのか

走っている

あれは
なにものなのか
なにものの掌の中のなにものなのか

走っている
ふりむいている
走っている
ふりむいている
走っている
たたらをふんでいる
赤い鉄板の上で跳ねている
跳ねながらうしろをふりかえっている

  母よ
  あなたは
  炎の一本道の上
  つっぷして倒れている
  夏蜜柑のような顔を
  もちあげてくる
  枯れた夏蜜柑の枝のような右手を
  かざしてくる
  その右手をわたしへむかって
  押しだしてくる
  突きだしてくる

わたしよ
わたしは赤い鉄板の上で跳ねている
一本の赤い釘となって跳ねている
跳ねながらすでに
走っている
跳ねている走っている
走っている跳ねている

一本道の炎の上

母よ
あなたは
つっぷして倒れている
夏蜜柑のような顔を
炎えている
枯れた夏蜜柑の枝のような右手を
炎えている
もはや
炎えている

炎の一本道

走っている
とまっていられないから走っている
跳ねている走っている跳ねている
わたしの走るしたを
わたしの走るさきを
燃やしながら
焼きながら
走っているものが走っている
走っている跳ねている
走っているものを突きぬけて
走っているものを追いぬいて
走っているものが走っている
走っている
母よ
走っている
炎えている一本道
母よ


空襲のさなか母とはぐれ、それでも自分は生きるために走り続けている。
「走っているものが走っている/走っているはねている/走っているものを突きぬけて/走っているものを追いぬいて/走っているものが走っている」と現在形で走り続けている語り手は「赤い釘」のようになっています。
「赤い釘」の熱さはどこからくるのだろうかを考えると、語り手を追いかける火でできた、長細い影が見えてきます。

『愛しているというあなたに』という詩で

引き返し抱き起こすこともできたはずなのに
一目散に走りに走ってふりむきませんでした
見殺しにしたのではないそれ以上です
むしろ積極的に母を殺した
その思いをふかめるためだけの以後二十二年
やむをえなかったのだゆるされていい何度か
そう認めようとした心を何度もわたしの行為が
裏切ってゆく八千三十日あまりのあけくれ


と語り手は何度となく母を見殺しにしたことを責め続けます。
しかし、宗左近さんの詩はそれが痛切になるほど静かになり、彼の行為が仕方なかったのではないかと私には思えてなりません。

戦争がどうという以前に、生死の境目の厳しさを改めて教えられる詩集でした。
『原爆詩集』よりも焼夷弾による空襲が多く行われたことを考えるだけで
宗さんの詩集はもっと読まれてほしいと思いました。


ブログランキングに参加しております。よかったらクリックしてください。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ1

テーマ : - ジャンル : 小説・文学

タグ : 書評 宗左近

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://literturehardcore.blog51.fc2.com/tb.php/296-f691c94c

 | HOME | 

出演予定イベント
3月17日 (水)19:00-24:00
『ユアパ!vol.34@渋谷SECO』


渋谷SECO
東京都渋谷区渋谷1-11-1 B1F
03-6418-8141
1000円+ドリンク
メールマガジン
ポエムコンシェルジュの選んだ一篇
(ID:0001086342) 読者登録解除フォーム
メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。
登録フォーム**
まぐまぐ 『まぐまぐ!』から発行しています。
カテゴリー
月別アーカイブ
RSSフィード
最新記事のRSS
最新コメントのRSS
最新トラックバックのRSS

Add to Google
はてなRSSに追加
My Yahoo!に追加
Livedoorへ追加
最近の記事
ブログ内検索
リンク
アクセスカウンター
最近のコメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

twitter
ブログパーツ



復刊ドットコム
絶版になっている本の復刊に
協力願います。

アイデアのおもちゃ箱
新しいアイデアを思いつくツールが全部で20種類以上!
発想力を高める方法や偉人の発想エピソードも詰まっています
書評
おすすめ詩集(インディーズ)
おすすめ詩集(インディーズ)

五十嵐倫子『色トリドリの夜』
ブログ関係
プロフィール

イダヅカマコト

Author:イダヅカマコト
ポエム コンシェルジェとして、詩集や文学、発想の紹介をしております。
恋愛詩、克己詩、悲しい詩、うれしい詩など、こんな詩が知りたいというごお問い合わせを歓迎しております。
ご献本やコラム・書評の執筆依頼、撮影などの依頼もうけております。
ご献本いただいた書籍にはご紹介を書くよう努力しております。

よかったら、お問い合わせフォームよりメッセージください

また、Twitterもやっております。
こちらからよろしくおねがいします。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。