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お姉さん気質にあふれた詩集 『色トリドリの夜』 

2009.09.27 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

色トリドリの夜
五十嵐倫子
クリックすると作者のページへ飛びます
七月堂





五十嵐倫子さんの詩集『色トリドリの夜』はお姉さんの詩集です。夜寝る前におすすめです。どんなに寝苦しい夜でも夜風が寝汗を飛ばしてくれます。

19編の詩が収められた詩集です。彼女の詩は、詩の中のことばが呼びかけあっていてまるで貝の呼吸のようです。
五十嵐さんは30代のちっこい女性で、私もよく会うのですが、ポエムカフェを開きたいという野望に燃えるあついお姉さんです。





たとえば『ココロとカラダ』。
この詩のなかで電車の座席に座る人をさまざまな「器」にたとえる手腕はとても暖かいです。
引用してみます
雲が細くたなびいて
水が少しこぼれてしまって
見下ろすと
カラダがぐうぐう居眠りしている
意識のない
カラダは空っぽの器になって
電車にゆらりゆら揺られていた
周りにもたくさんの器があって
一緒に運ばれていく
座っている器
立っている器
喋っている器
眠っている器
読んでいる器
聞いている器
考えている器
そのひとつひとつが 灯っている


一番最後の「そのひとつひとつが 灯っている」にたどり着くと私たちの身体はガス灯のよう。明るいというより暖かいことばが彼女の詩につまってます。

よろしかったら五十嵐倫子さんのページにて、全文でお楽しみください。
>> ココロとカラダ (全文)





私が一番気になったのは『問いかけたい』です。全文引用してみます。

問いかけたい



一瞬目を見開いたと思ったら
ふり返って
私を見ている人がいる
改札から出てきた人たちが
怒涛と流れてきて
すれ違った
スーツ姿の若い男の人
紺のスプリングコートの襟を立てて
黒ぶちのメガネ 短髪
まだ見ている? まだ見ているの?
だけど私は、
回転している足を止められずに
前へ向き直って
人ごみにまぎれていく

先週もそうだったことを思い出す
この前は女の人だった
ふり返っていた
淡い水色のコートだった

私に見覚えがあるのですか?
あなたたちの記憶の中に
私に似た人がいるのですか?
私がいるのですか?

ときどき記憶の重なることがある
朝のカフェで夢を縫い合わせるようにする会話も
雑誌に載っていたお店を探して歩く街並みも
やっと書き上げたばかりの言葉たちも
いつかの記憶を辿っているようで
しゃべっている歩いている書いている
のは、私だろうか(じゃないようで)
いつかのワタシの着ぐるみを着た私だろうか
私の着ぐるみを着たいつかのワタシだろうか

花の咲き始める頃には
空気も緩むから
時空が歪むこともあるかもしれない
何かに近づいている気配がある

もしもいつかどこかで既にひとつの人生を生きていて
私はその人生をもう一度生き直しているとしたら
再びその終点へ向かってしまうのだろうか(それはオシイ)
新しい記憶を刻みたい

ふり返った人は何かを伝えに来たのかもしれない
伝えに来たのかもしれなかったのに
私は、
立ち止まらなかった
何ですか?と問いかけなかった


この短くない詩のなかで、五十嵐さんはかっこと音を使って巧みに言葉をやわらかくしようとします。

一つ目は第四連。
「記憶を辿って」いる語り手が自分自身を疑う部分が気になるところ。
「のは、私だろうか(じゃないようで)」「着ぐるみを着た私だろうか」「着たいつかのワタシだろうか」と、五十嵐さんが「(じゃないようで)」と分かりきっている疑問を言葉として残しています。

同じように、最後から二連目で、「再びその終点へ向かってしまうのだろうか(それはオシイ)/新しい記憶を刻みたい」という風に、やっぱり「(それはオシイ)」という形で、分かりきっている言葉を彼女は言葉に残します。


この二つの言葉の違いは、音の違い。
第四連の言葉はかっこのある「(じゃないようで)」とかっこをつけた言葉を書くことによって、後に続く行と一番最後の音が違います。

それに対して「(それはオシイ)」「刻みたい」と最後から二連目ではかっこを使うことで、最後の音をあわせています。そして次の連の「伝えに来たのかもしれない」「伝えに来たのかもしれなかったのに」というところまで、最後の音が「イ」で終わる行が続いています。これに続く最後の3行が「ア」の音で終わることもポイントです。

作者はここで音をそろえることで、語り手の意志のゆるやかさを伝えたかったのだ、と推定されます。

たとえば、わたしが書くとしたら、「(じゃないようで)」の部分のかっこを閉じないで、そのまま改行もなく、
「私だろうか(じつはワタシの着ぐるみを着た私だろうか
私の着ぐるみを着たいつかのワタシだろうか」と書くと思います。

音と行の長さをそろえることで五十嵐さんの詩は安定を作っています。
「(じゃないようで)」というやわらかい疑問を使っているのもポイントです。
もしも「(じゃないようで)」という、かっこの中のことばがないときも意味はわかります。
でも、そのまんま疑問が投げられ続けるよりも、五十嵐さんはワンクッションおくことで、疑問をさらに疑うということをされています。

最後の連の「(それはオシイ)」も、かっこの中を考えたときと、かっこの言葉を考えないときとではどのように違うのでしょうか。できたら一度考えてくださると、みなさんの中での言葉の大切さがわかるかもなとおもいます。




最後にもう一度。五十嵐さんの詩集は、とても読んでいて安心する詩集です。安心といっても、ありきたりの言葉ではなく、私たちをやさしく見守ってくれるお姉さんの詩集です。

AMAZONなどでは取り扱われていないので、ご購入は作者の五十嵐倫子さんへのお問い合わせ、または秩父のポエトリーカフェ武甲書店にお越しください。
また、10月4日にポエトリーカフェ武甲書店で行われる秩父オープンマイクフェスタには五十嵐倫子さんが出演されます。

また、五十嵐さんのWEB、『nontan's room』でも彼女の詩を何編か読めます。
>> nontan's room

>> ポエトリーカフェ武甲書店



五十嵐倫子著『色トリドリの夜』
出版:七月堂
ISBN978-4-87944-141-6
詩集/09年5月/A5変形判/フランス装/本体1200円





他のページでの『色トリドリの夜』の感想

>> 鈴木志郎康さんによる『色トリドリの夜』の書評

>> 北爪満喜さんによる、『色トリドリの夜』の書評(7月25日の日記)

>> pipinera blogの『色トリドリの夜』の書評


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