社会分析脳を訓練する実践読書ブログ

勉強会の開催、参加・ビジネス書や人文書の読書を通じて、将来を見通す能力「社会分析脳」を鍛えていくブログです。

<<さとなおさんが鳩山首相と飲んだことは、日本のマスコミの能力を私達におしえてくれました。  | ホーム | 風祭智秋さんに五行歌を教えていただきました。>>

スポンサーサイト 

--.--.-- この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


ブログランキングに参加しております。よかったらクリックしてください。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ1

『さよなら、柩』は本当に文句なしに面白い詩集 

2009.09.30 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

さよなら、柩さよなら、柩
(2009/08)
斎藤 倫

商品詳細を見る



斉藤倫さんの新刊『さよなら、柩』は文句なしに面白いという言葉しか出ない詩集です
寝ころんで読んでも電車の中で読んでも笑いが止まりません。
羽のような言葉とユーモアで一つ一つの詩を興味深く読ませてくれるだけではありません。
なにか本当のものの姿を見せてくれるような気がする詩集です。

ヘイ ヘイ
いんちきバビロン
はりぼてじゃないか
あんちょこじゃないか
ぼくはまた
いまだかつてないクイズ番組が
スタートしたかと
わくわくしちゃったじゃないか


という出だしからして印象的な『バビロン』をはじめとして、愛やルドルフ・ヘスなど幅広いテーマを扱っています。
僕が特に好きなのは『ニューロン・ソング』。
全文引用します。

ニューロン・ソング




ちっぱー
ちっぱー
と夜が鳴く
らいんごりん
らいんごりん
と亀はゆく
旅立つのは
もうすこし
待ってくれないか
遠ざかる背を
見送るのは
人格だけで
じゅうぶんだから

ピンジャックを
差し込むと
アンプが
あーん
という
あーんあーん
という
ちっぱー
ちっぱー
と夜が鳴く
てきめんの星座が
火花をあげて
降ってきて
むきだしのニューロンは
ぱっちっこっふっ
ぱっちっこっふっ
とおしいただく
らいんごりん
と亀はゆく

ほねが
折れたところから
強くなるように
神経も切れたところから
ずぶとくなって
ちいさなあいつの声も
聞こえなくなって
犯罪みたいな
夜がきて

人格の影が
また消えていく
目出し帽を
すっぽりかぶって


この詩の好きな部分はたくさんあるのですが、一つ目はオノマトペの音のよさ。「夜」は「ちっぱー」。
「亀」は「らいんごりん」。
「ニューロン」は「ぱっちっこっふっ」。

驚くべきことは、「夜」も「亀」も「ニューロン」もこの三つのことば以外で説明されていません。そして、この三つのオノマトペが「夜」や「亀」という静かな言葉に比べて大きく聞こえてくること!
「らいんごりん」は亀が転がっているというには大きすぎるような気がしますし、「ぱっちっこっふっ」はニューロンが電気信号ではじけてサイボーグの世界。「ちっぱー」鳴く夜はどんな夜かとどきどきします。

これらの音が「旅立つのは/もうすこし/待ってくれないか」や「神経も切れたところから/ずぶとくなって/ちいさなあいつの声も/聞こえなくなって」という哀愁あふれる言葉と出会うとき、私は自分が恐竜時代に一人取り残された気持ちになります。

本当に小さい頃、わたしたちは今聞こえているような音で物音を聞いていないはずでした。今は意識的に聞いていないエアコンの音なども、赤ちゃんにとっては驚きの音だったはず。
今でも聞いたことのない音は全て驚きと音そのものの軽さで私に迫ってくるような気がします。たとえば今まで使ったことのない調理器具など。
『ニューロン・ソング』のうるさいオノマトペは私がどんなふうに成長したかを考えさせてくれた珍しい詩でした。





こういった言葉のリズムが『ルドルフ・ヘスの部屋』
という詩ではまったく違う形で出てきます。
ルドルフ・ヘスを思わせる語り手によって、ホロコーストが語られる詩です。

ルドルフ・ヘスはぼんやりしている
じぶんのしたことが
なんなのかわからないというには
しっかり細部が有る
ひどいことをした
悪いことをしたと思うのに
そのひどいこと
悪いことが
紙にかいた花みたいだ
魔がさしたというなら
いまのじぶんはまだ
魔がさしたままだろう

『ルドルフ・ヘスの部屋』より


引用したところよりも前の部分で、ユダヤ人に対して行われたことが「処理」「リサイクル」「遺産を/流用」といった形で書かれています。
語り手はこれらの出来事について「じぶんのやったことと/じぶんとのあいだに/落ちこんでいる」と語ります。

「悪いことが/紙にかいた花みたいだ」という形で言葉で戦争犯罪を語ることはどういうことなのでしょうか。

谷内修三さんは、この詩について『斉藤倫『さよなら、柩』(2)』というエントリーで
犯罪を裁くのではなく、犯罪のなかにある「哲学」、人間が生きるときの「こと」と「じぶん」の「あいだ」の関係を「考えている」。


という言葉をつかって説明されていますが、私もこれに賛成します。

詩が人ひとりひとりを語るとき、どんなに大きな歴史のことを内容に組み込んで発言していても、それは人間それ自体、厳密に言うと書き手を語るものだという気がします。

一人の人間の自我と数百万人の死は量として釣り合わない以前に、質としても釣り合うことはできないのだとあらためて考えさせられます。

ここにある文章だけでは不十分だと思うので、ぜひ谷内修三さんによる書評もご覧ください



関連エントリー

>> 人間は平和を築く石畳だって言われる。平和という言葉は戦争よりも人を動かせると知る 詩集『日本はいま戦争をしている』

>> 映画『愛を読む人』の原作は自由について教えてくれる強いメッセージ

>> 5分後、10分後の未来を変える意思の持ち方を教えてくれる『夜と霧』


オルペウス オルペウス (新しい詩人)オルペウス オルペウス (新しい詩人)
(2006/10)
斉藤 倫

商品詳細を見る


ブログランキングに参加しております。よかったらクリックしてください。
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

人気ブログランキングへ1

テーマ : オススメ本!! - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 斉藤倫 さよなら、柩 人間性 ホロコースト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://literturehardcore.blog51.fc2.com/tb.php/311-f04b7c8a

 | HOME | 

出演予定イベント
3月17日 (水)19:00-24:00
『ユアパ!vol.34@渋谷SECO』


渋谷SECO
東京都渋谷区渋谷1-11-1 B1F
03-6418-8141
1000円+ドリンク
メールマガジン
ポエムコンシェルジュの選んだ一篇
(ID:0001086342) 読者登録解除フォーム
メールアドレスを入力してボタンを押すと登録・解除できます。
登録フォーム**
まぐまぐ 『まぐまぐ!』から発行しています。
カテゴリー
月別アーカイブ
RSSフィード
最新記事のRSS
最新コメントのRSS
最新トラックバックのRSS

Add to Google
はてなRSSに追加
My Yahoo!に追加
Livedoorへ追加
最近の記事
ブログ内検索
リンク
アクセスカウンター
最近のコメント
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

twitter
ブログパーツ



復刊ドットコム
絶版になっている本の復刊に
協力願います。

アイデアのおもちゃ箱
新しいアイデアを思いつくツールが全部で20種類以上!
発想力を高める方法や偉人の発想エピソードも詰まっています
書評
おすすめ詩集(インディーズ)
おすすめ詩集(インディーズ)

五十嵐倫子『色トリドリの夜』
ブログ関係
プロフィール

イダヅカマコト

Author:イダヅカマコト
ポエム コンシェルジェとして、詩集や文学、発想の紹介をしております。
恋愛詩、克己詩、悲しい詩、うれしい詩など、こんな詩が知りたいというごお問い合わせを歓迎しております。
ご献本やコラム・書評の執筆依頼、撮影などの依頼もうけております。
ご献本いただいた書籍にはご紹介を書くよう努力しております。

よかったら、お問い合わせフォームよりメッセージください

また、Twitterもやっております。
こちらからよろしくおねがいします。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。