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たくさんの声で私たちの日常をささやいてくれるe.e.カミングスの詩 『カミングス詩集』 

2009.10.01 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

カミングズ詩集 (海外詩文庫)カミングズ詩集 (海外詩文庫)
(1997/06)
E.E. カミングズ

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e.e.カミングスの詩からはたくさんのざわめきが聞こえます。
e.e.カミングスは1910年代から60年代にわたって活躍したアメリカの詩人です。父を牧師に持ち、ハーバード大学を卒業。第一次世界大戦に従軍したら反逆罪で拘置され、奥さんを金持ちに奪われるなど波乱に満ちた人生を送っています。
50年以上の創作人生を新しい詩の表現方法に捧げた彼の詩は、かっこを使ったり、単語をちぎったり、または原文でしか分からないのですが全文小文字の詩もあります。

今では当たり前のように使われているこれらの手法も彼が詩を書いていたころには。まだなかったのだなと思い知ります。そして、詩集を読むと、彼の詩が強く生活の中に息づいていたことが分かります。ありとあらゆる詩の実験の前には生きたことばが必要だと思い知ります。

現実にYoutubeで「ee cummings」と検索すると、彼の詩が英語圏で広く受け入れられていることが分かると思います。

>> Youtubeで検索してみました

多くの実験を行っていたカミングスですが、この詩集から驚かされることは、そのことばが非常に整理されていること。
一つひとつの言葉がささやいていていること。そして、そのささやきが見事に日本語に写されたこと。

詩集を読んだ後に原文を読むと、この詩集の訳者には敬意を惜しむことができないと思います。100編以上に及ぶ詩や童話を訳してたったの1,223円はさすがに安すぎます。

ここでは藤富保男さんが訳された、風についての作品を取り上げます。
風は明るいほっそりした眼をした
貴婦人である(彼女は

うごく)夕暮れに
そうしてお構いなく丘を
撫でて行く

(わたしはこの疑うこともできない緑の人と話したことがある「あなたは
風さん?」「ええ」「どうして生きていないように 花が思想のように

それらを撫でるの」「だって
わたしの心に咲くものは
とっても不器用な変装をしてるものにつまずいたり
もろくて優柔不断ばかりをやってしまうんです

特に理由もなくこういうことを
考えないでくださいよ
そうでなくても
薔薇や山は 私であるわたし
とはちがっていますからね わたしは新しい息吹をとりもどした世界を

こえてとびはねて息をはずませてやってきますがね」
と緑の衣装をまとった貴婦人の)風はわたしに言ったのだ
そして彼女は  野原を  撫でていく
(夕暮に)


>> 原文はこちら

谷川俊太郎さんの詩の風を歌った部分と照らし合わせてみるましょう。(谷川さんの詩の題名を、ブログの制限で挙げられないのが残念です)

風が吹いてくるよお
風とはもうやってるも同然だよ
頼みもしないのにさわってくるんだ
そよそよそよそようまいんだよさわりかたが
女なんかめじゃねえよお
ああ毛が立っちゃう
どうしてくれるんだよお
おれのからだ
おれの気持ち
溶けてなくなっちゃいそうだよ

(谷川俊太郎さんの詩より)


と、このカミングスの詩と谷川さんの詩で語られる風の行為の近さ。
会話という形式を取った31歳のカミングスに対し、あけっぴろげな60代の谷川さん。
年齢も、生きている時代も場所も離れた詩人ですがこの二人の風に対する明敏な感覚だけはかわらず、そのすくい取ろうとする会話を見ると私はW.B.イェイツの詩を思い出してしまいます。

W.B.イエィツ『エゴ・ドミヌス・トゥース』の書き出し

ヒーク「灰色の砂の上を君は歩いているね、
  底浅い川に沿って、風に吹き晒された古い君の塔の下を。
  マイケル・ロバーツが残していった本は開かれたまま
  ランプの火にむなしく照らされているのに、君は月明かりの砂地を歩き、
  すでに人生の盛りを過ぎていながら、
  おさえきれない妄想にとらわれて、
        魔法の形象を追い求めている」

イルレ「ぼくはイメージの助けをかりて呼びかけるんです、
  ぼく自身の反対のものに。これまでまるで扱ったことのない、
        まるで注意してみたこともないあらゆるものを招き寄せるんです」


イェイツの詩の持っている幻想的な画面の作り方は谷川さんの詩にはない特色で、谷川さんの視点とイェイツのイメージを持っているカミングスは本当に「ないものからあるものを作る」ことのできる人だと感じます。
谷川さんとイェイツとカミングスの3人に共通したことは男性で、かつ生活から戦争まで幅広く題材を求め、性の詩を書けること。大詩人は体中に持っている感受性にのだなと驚かされるばかりです。



他にも、谷川保さんが訳されたこんな詩

黄水仙の季節には
(生きる目的は成長することだと知っている人々よ)
<why>は忘れて
<how>を思い出してほしい

ライラックの季節には
目覚める目的は夢みることだと主張する人々よ
<seem>は忘れて
<so>を思いだしてほしい

バラの季節には
(パラダイスつきのぼくたちの now
ぼくたちの here に瞠目する人々よ)
<if>を忘れて
<yes>を思い出してほしい

心が理解しうる全てのものをこえて
こころよい全てのものが生まれる季節には
<find>を忘れて
<seek>を思い出してほしい

そして
在るというひとつの神秘のなかで
(ときどき時間から解放されるとき)
ぼくを忘れ そしてまた
ぼくを思い出してほしい


>> 原文はこちら

かんたんな言葉でできているのですが、その「<why>は忘れて/<how>を思い出して欲しい」というささやきを作り出している、かっこにかこまれた言葉の作り方の自然さにはくらくらしてしまいます。




カミングス詩集は、書くワークショップにも参加されたヤリタミサコさんが、1984年に訳された詩も掲載されています。
掲載された彼女の訳詩は

さわっていいかい とカレ
(キャーって言うから とカノジョ
ちょっとだけ とカレ)
すてきよ とカノジョ

(くっついていいかい とカレ
どのくらいとカノジョ
たくさん とカレ)
ヤダーとカノジョ


>> 原文はこちら

と性を思わせる3編。そのどれもがリズミカルな訳で見ている私はどきどきします。
ヤリタさんは今年か来年にカミングスの詩集を新しく出されるそう。私はどきどきしながら見守っています。

彼女の評論集『詩を呼吸する―現代詩・フルクサス・アヴァンギャルド』は初めて現代詩を読む人にお勧めできる、現代のパフォーマンスアートと詩の読み方を教えてくれる本です。

詩を呼吸する―現代詩・フルクサス・アヴァンギャルド詩を呼吸する―現代詩・フルクサス・アヴァンギャルド
(2006/11)
ヤリタ ミサコ

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E.E.カミングスによる朗読動画もyoutubeにありました。
>> 原文はこちら





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