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生きていることを問い直させてくれる美術展 医学と芸術展 (森美術館) 

2009.12.15 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

森美術館で行われている『医学と芸術展』に行きました。

展示されていたのは東洋医術やペルシャの医術の医学書から、ダヴィンチやミケランジェロの解剖図。手術が見世物だった時代の絵画からやなぎみわやダミアン・ハーストの最近の作品まで。

医学に使う機械としてHONDAの歩行アシストやTOYOTAの脳波によって動く車いすが展示されていて、こういった機能を追求したデザインは一緒に展示されていた蜷川実花の写真が使われた義足と比べて明らかに強いメッセージを発していたことも印象的でした。




今回の展示で驚かされたのは自分自身が遺伝子関連の技術、特にクローンを取り扱ったアートに心を動かされなかったことでした。クラゲの遺伝子を組み込まれて光るようになったウサギやネズミもかわいいとしか思えませんでした。

クローンに対する反応するのは多分に宗教的なものがあるのだろうかと思うのですが、クローンを取り扱った芸術作品ではカズオ・イシグロの小説『わたしを離さないで』に勝るものはないように思われました。
イシグロの小説では臓器目的に作られ、本人もそのことを知っているクローン人間の成長を題材に生命や人間関係の有り方が強く語られています。
小説という劇や詩と独立して近代に作られた新しい芸術形式でなければ語れなかったものがイシグロの小説にはあります。




ただ、この日の私にはクローンではなく今目の前で起きている子供を臓器目的に売っている人たちの倫理や社会を『医学と芸術』の形で取り上げられなかったのかということに強い関心がありました。




この日見た中で断トツに目を惹いた作品は松井冬子さんの『無傷の標本』です。

大木の根に座る足を開いた全裸の少女を中央に配した大きな掛け軸です。

少女の頭に巻かれている花輪と対照的にその右側の黒い渦は枯れ葉を巻いています。その黒い渦を支える花の茎は肋骨でできていて、根っこには赤ん坊がいます。
少女がもたれかかっている木はまるで人の筋肉の繊維を描くのようにくっきりと樹皮の境目が描かれています。真ん中にはのど仏があるのでしょうか。
白く眼もうつろで開いた足の真ん中の赤い花びらがのぞいた少女を境目に生と死が溶け込んで非常に迫力のある絵でした。

松井さんの下図展が九段下の成山画廊で行われています。ここには『無傷の標本』の下絵も展示されているとのことです。




作品の圧倒的な力を感じさせてくれた松井さんに対し、一番考えさせられたのはヴァルター・シェルスさんの写真作品『ライフ・ビフォア・デス

この作品は2枚ひと組一人の人の顔を大きく撮影した作品で、一枚は生きているときの写真。もう一枚は亡くなった直後に撮影された写真です。

80代の老人から17カ月の赤ちゃん。男女、年齢も全く違う人の生と死の境目を撮影したこの作品に対してうまくいえる言葉がありません。
いつか、そのようになるであろう自分をそこに写された写真の中に見ようと努力しましたが、彼らの写真は鏡のように私の考えを跳ね返すばかりでした。

ただ、この蝋のように乾いた頬や深く閉じられた瞼に刻まれた一本一本のしわを撮影するために彼はどれくらい多くのシャッターを切り、どれほど多くの言葉と心が交わされたのかを想像し、私たちはどこへ行くのだろうか考えつつ帰途につくばかりでした。

ライフ・ビフォア・デスの一部はWEBサイトでご覧になれます
>> Life before Death




医学と美術展は人間の生と死、老い、そしてそれらと戦おうために作りだされたいくつもの知恵が入り混じり、とても情報量の多い展示でした。
それでも頭の中があまり混乱しなかったのはひとつひとつの作品のメッセージ性が強かったこと。そして自分自身が自分の生の在り方について考えているからだと思います。

今回作品以外で驚かされたことが一つありました。
それは展示に触ってしまう人、特に大人の女性がほかの展覧会に比べて格段に多かったことです。
触った人がいた展示はただ一つ、アクリルの中に閉じ込められた人体の輪切り標本です。アクリルも作品だということが分からなかったのだと思います。触ろうとした時に彼女たちが何を考えていたかは判りませんが、触ろうとする行為自体に人が自分の体に示す親しみを感じて少し胸が熱くなりました。

医学と芸術展は生に対して持っている価値観を自分の視点で問い直させてくれる場所です。ぜひ一度行ってみてください。
きっと、一人で行くよりも大切な人と行って語り合う方がいいとおもいます。
時節柄カップル連れも多かったですし。



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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル : 学問・文化・芸術

タグ : 森美術館 医学と芸術

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