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高岡修 『蛇』 

2010.01.04 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

高岡修詩集 (現代詩文庫)高岡修詩集 (現代詩文庫)
(2008/09)
高岡 修

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高岡修さんの詩集『蛇』は非常に密度の高い詩集です。

名前のとおり蛇を題材にした詩集です。

ただ、この蛇は野生の蛇ではありません。
旧約聖書でイブに禁断の果実を食べさせた蛇に近いものです。

創世記の中で蛇は神が造った野の生き物の中でもっとも賢いものとして出てきます。
しかし蛇はイブにリンゴを食べさせることによって「生涯這いまわり、塵を食ら」わなければならなくなるのです。

この禁断の果実を食べたことは「原罪」と言う名で呼ばれ、人間をおそう数々の苦難の原因となります。

人間をだました者、罪を作ったものとして語られる蛇ですが、高岡さんの詩集の中にでる蛇は聖書とくらべて数段人間くさく、賢者のように扱われています。

『始原の蛇』という私が一番好きな詩をご覧ください。

始原の蛇



かなしみには輪郭がない
かといってそこに
林檎の果芯のような
饐えた欺瞞の中心があるわけでもない
野にあって
蛇たちは不意に
かなしみの全体と遭遇する
知らぬうちに
かなしみが全身を
濡らしている

殺戮にも輪郭がない
かといってそこに
葡萄の果肉のような
ぬるりと発酵する情念の全体があるわけではない
むしろ殺戮とは
情念の全体が消尽する
その
不意のまぶしさへ
浮上することだ

一匹のシロネズミを締めつけていると
やがて
飢えが消える
飢えのかわりに
血の情動のようなものが
満ちてくる
それはときに
めくるめく情欲とも見きわめがたい
しかし
蛇たちにはそれが
紛れもないかなしみの受肉だとわかる
ほんとうのかなしみはいつも
血の情動のふかみに
一匹の始原の蛇を
飼っているからである


この詩でつかわれている言葉はかなり強い言葉です。
「殺戮」「消尽」「飢え」「情動」「受肉」といった言葉が目に付きます。
第三連では「シロネズミ」を捕らえて食べる蛇の描写もあり、その

でも、この詩を通して流れているものは一連目にある「かなしみ」だとおもいます
「輪郭がな」く、「不意に」「遭遇する」「かなしみ」が

「かなしみ」がどうして

二連目で語られる「殺戮には輪郭がない」という言葉は「かなしみには輪郭がない」に対応しています。
三連目でシロネズミを食べながら満ちてくる「血の情動」は「かなしみの全体」に対応しているように見えます。

最後に「ほんとうのかなしみ」が飼っているという蛇はどのような蛇なのでしょうか。
インド神話で蛇は宇宙を創造する際に現われ、釈迦も蛇神ナーガの血をひくとされています。

行分けのセンスが非常にいいことも彼の詩の驚くべきところです。
『始原の蛇』の二連目の「その/不意のまぶしさへ/上昇することだ」という部分の「その」という部分の言葉のタメは「殺戮」や「情念」を「まぶしさ」へと向かわせるために本当に必要な行の切れ目だと感じさせられます。


高岡修さんは俳句もされているそう。現代詩文庫の高岡修詩集に収められている「死の評論」では俳句の切れ字を通して現代詩までを読むとても読みごたえのある評論で、詩を書く人にお勧めです。

『水の空』という詩では蛇の夢が描かれています

野にひそんでいると
密生した夢が
流れ込んでくる
まるで洪水のようだと
蛇たちは思う
むろん
蛇たちは知っている
ほんとうの洪水は
こころの中にこそ起こる
やがて
死んだ蛇たちが
水の空に
灯を
点けてゆく


蛇が空に灯をつける光景はまるで雲のようです。


高岡修さんは鹿児島在住の詩人です。

思潮社の現代詩文庫の高岡修詩集では詩集『蛇』をはじめとした多くの詩と評論を読むことができます。

一遍一篇の詩の密度が濃く、読んでいて本当に勉強になる詩集です。


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