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文月悠光『月光』を読みました 

2008.09.24 この記事をクリップ! このエントリーをはてなブックマークに追加

文月悠光『月光』

今日紹介する詩集は文月悠光さんの個人誌『月光』です。

文月悠光さんは2006年の詩学最優秀新人と、2007年の現代詩手帖賞という、
現代詩を中心に掲載している2つの雑誌の新人賞の受賞者。
その上、北海道在住の現役女子高生です

サッカーに例えると新人王かつベストイレブンをとった女子高生です。

今回が初めての個人誌で、完全に手作りの装丁です。
どれくらい手作りかというと、編集後記のページが一番分かりやすく
手書きのイラストに、タイプされた後書きが糊付けされたあとの見えるくらい微笑ましい個人誌です。

詩が4編。そして吉増剛造の朗読会のレポートが入っています。


彼女の詩の特徴は、短い行わけされた部分と、完全につながっている文章(散文)が一つの詩で組み合わさっていて、散文の部分が非常に鮮明な映像を描いていること。

これについては谷内修三さんのブログで的確に表現されています。

私も長い間彼女のように行わけと散文の組み合わせを考えているのですができませんでした。音の流れが非常に気になってしまうのです。
それだけでも彼女のように散文で物を書ききっていまう力技には驚きを隠せませんでした。
そして、その手腕は今回も発揮されています。

例えば『黄色い目』という詩。
お弁当箱の中で文月さんは女性の体を作ります。

弁当箱の中のゆで卵。
語り手の父が患者さんからもらうゆで卵が弁当箱にあるのを見つけて彼女は恐怖します。

白く濁ったビニール袋の中でひしめく卵たちは
冷蔵庫の隅を占領し、食卓の洗礼を受け、
ついに私の弁当箱へ進入してきたのだ。
彼の黄身は白身の真ん中に
きちんととどまっているけれど
私の真ん中を打ち抜くものが
いつも私であるとは限らなかった。
腹に熱い手をあてがう。
もうすぐ、この身体から粘液をまとって
"女"が吐き出されることだろう。
他人の手の加わったものが入ってくる戸惑いが、この後の散文へ続きます。
(なべの中でかき回されれる菜箸が、底をこすって一定のリズムを鳴らす。知らない台所の知らない火にかけられた湯の、懐かしい温度を殻ごしに感じた。黄身が動いた後を、あたたかい粘液が濡らしてゆく。一方で、私の身体は冷たくなり始めていた。握り締めた拳の中、指の感覚が失われる。身をよじろうと足に力をこめるが、枷にはめられたように動かない。首の後ろ側、うなじの辺りへ熱が新しい言語を語りだす。私はその意味が分からないので、苦しい
この後もゆで卵から現れる語り手の身体の感覚がしぼり出されていきます。
自分の見ていない人の、ゆで卵を作る姿。例えば、見ていないはずの「あたたかい粘液」。彼女がどういう体験をしたかはわかりません。
ただ、ゆで卵という、料理とも言えないものを作る光景から生まれてくる、少女の自分が女であることの戸惑いが強く描かれていきます。

私は21日に高田馬場の喫茶店で『黄色い目』の朗読をしました。
そして、彼女の言葉に振り回されました。
今まで、体験のない人のフィクションだと思っていた部分が実は非常に身体の深い部分から出ているのだと気付きました。
この詩で書かれたことが真実であるだけに、25歳の男の私の、一般女性より2オクターブ低い声で読むとこっけいになってしまうものでした。

他にも、『落花水』のように、
絵を描いている話し手の青いシャツにかかった赤い絵の具から、
(彩る意味が無さすぎるこのからだ。
「お前に色なんて似合わない」
そう告げている教室のドアを"わかってる"と引き裂いて、焼けつくような紅を求めた。古いパレットを、確かめるように開いてみるけれど、何度見てもそこには私しかいない。それは、雨の中でひっそりと服を脱ぐ少年の藍)
と青よりも濃い藍色に、少女ではない少年を自分の姿へ引き寄せる手腕も見逃せません。

この詩集に掲載されている4編の詩は、少女の自分の身体へ向けられた緊張でみなぎっています。

そして吉増剛造の朗読のレポートでは、楽屋裏に入って直接話が聞けるほどの実績を残している彼女の、客席からときめいている初々しさに涙まで出てしまいそうです。
(吉増剛造の朗読、のリンク先は別の場所朗読です。真ん中の「download」と書かれている部分から彼の朗読がダウンロードできます)



この詩集を手に入れるには文月悠光さんのブログ「お月さまになりたい」より彼女自身に連絡をするか、

北海道の
テンポラリースペース
書肆良成
CAFE QUATRE-L

の3つの書店へ。

東京都では阿佐ヶ谷の私人図書室で読むことができます。(リンク先はmixiのコミュニティです)

お値段は180円と送料という、ファミマのサンドイッチ程度のお値段ですので、是非一冊持っていただくと、後でプレミア間違いナシです。


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